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大阪高裁判決に対する声明文

遅ればせながら、「強制不妊訴訟不当判決にともに立ち向かうプロジェクト」との連名で、大阪高裁判決に対する声明を発表しました。

少し時間がかかりましたが、仙台高裁期日の報告集会等で弁護団による解説を聞いたりするなかで、この判決の評価をまとめることができました。少し長いですが、読んでくださればうれしいです。




​ 2022年2月22日優生保護法訴訟大阪高裁判決に対する声明


2022年3月7日

優生手術被害者とともに歩むみやぎの会

強制不妊訴訟不当判決にともに立ち向かうプロジェクト


私たちは、仙台地裁で始まった、旧優生保護法被害者の国への謝罪と補償を求める闘いに伴走する学生・市民の有志です。同法が長年にわたって許してきた凄まじい人権侵害の歴史を学び、見過ごされてきた当事者の「人生被害」に向き合い、国の責任を問うとともに、二度と同じことを繰り返さないよう、地域社会での「共生」の実現を目指して活動をしています。

2022年2月22日、大阪高等裁判所第5民事部(太田晃詳裁判長)は大阪地裁判決を変更し、国に対し優生保護法被害者である控訴人らに対する損害賠償を命じる判決を言い渡しました。これは、2018年1月に宮城県の知的障害のある女性が提訴した国家賠償請求訴訟につづく全国の一連の裁判で、初めての勝訴判決でした。

判決では、旧優生保護法によって「不良」であるとの烙印を押され、差別・偏見が続く社会で、十分な情報も相談先もなく、司法へのアクセスが著しく困難となっていた控訴人らに対して、除斥期間の適用をそのまま認めることは「著しく正義・公平の理念に反する」として、除斥期間の適用を制限しました。この点は、控訴人らがおかれてきた社会環境や生活状況を踏まえたものであり、高く評価します。

これまで、仙台地裁をはじめ各地の地裁判決では、旧優生保護法を憲法違反としつつ、いずれも除斥期間を適用し原告の訴えを退けてきました。このような、違憲の法律による重大な人権侵害が、なんの責任も問われずに見逃されるという判断に、私たちは強い憤りを覚えていました。今回の大阪高裁判決では、やっと司法が人権保障の砦としての役割を果たしてくれたという思いでいます。

一方で大阪高裁判決は、控訴人らの被害が終わった時点を、旧優生保護法が母体保護法に改正された前日の1996年9月25日としています。しかし、本判決も指摘するように、控訴人らの被害は優生手術だけにとどまらず、この法律によって一方的に「不良」とされ、非人道的かつ差別的な烙印を押された状態に置かれたことにあります。法律改正のその日から、その被害が終わるなどということはありません。焼きごてを押し当てるのをやめたからといって、次の日には傷跡がきれいになくなるわけではないのです。社会のあらゆるところに染み付いてしまった優生思想を、取り除く措置がなされなければなりません。個人の尊厳の回復には、少なくとも、謝罪と補償、名誉回復、偏見差別をなくすための人権教育の強化などが必要ですが、国はこれらを怠り、控訴人らの被害を長年放置してきました。その意味で、今回の大阪高裁判決が、救済措置の不作為を違法としなかったことは大変残念でした。

宮城県には、20年以上被害を訴えてきた方がおられますが、国は「当時は合法だった」と言い続け、問題をなかったことにしようとしました。国だけでなく、社会の多くの人がその被害に目を向けようとしませんでした。裁判が始まって注目されるようになると、原告に対して心無い言葉を投げかけようとする人や、インターネット上で、関連のニュースに差別的なコメントを寄せる人をみかけます。このような状況を見れば、被害を訴えることがいかに困難であるかは明白です。やっとの思いで被害を言葉にし、裁判に訴えても、ことの重大さに反して、「時間切れ」という冷たい対応に傷つけられてきました。国が、深刻な人権侵害であったことに気づきながら放置し続け、いまも被害者に誠実な謝罪や補償をしないことは、何重もの人権侵害をいまだに続けていることにほかなりません。

ここに、旧優生保護法の被害はまだ終わっていないことを改めて強調し、国がこの大阪高裁判決を真摯に受けとめ、上告することなく、すべての被害者に対して速やかに謝罪と補償、人権回復の措置をとるよう求めます。

以上


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