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2024年7月3日優生保護法訴訟最高裁判決に対する声明

                                                                                        2024年7月17日

優生手術被害者とともに歩むみやぎの会

 

私たちは、2018年に仙台地裁で始まった、優生保護法被害者の国への謝罪と補償を求める闘いに伴走する市民の有志です。同法が長年にわたって許してきた凄まじい人権侵害の歴史を学び、見過ごされてきた当事者の「人生被害」に向き合い、国の責任を問うとともに、二度と同じことを繰り返さないよう、地域社会での「共生」の実現を目指して活動をしています。

2024年7月3日、最高裁判所大法廷(戸倉三郎裁判長)は、裁判官の全員一致で、優生保護法被害者である原告らの損害賠償を国に命じる判決を下し、仙台の事件については、高裁判決が誤りであり、損害について高裁で審理をやり直すべきという判決を言い渡しました。

判決では、優生保護法は立法当時の社会状況を考えても不当であり、「個人の尊厳と人格の尊重の精神に明らかに反する」として、憲法13条、14条1項に違反することを認めました。また、明白に人権を侵害する法律をつくった国会議員の立法行為は違法だったとしました。

加えて、48年もの長い期間にわたって障害や病気のある人を差別して、多大な犠牲を求める施策を積極的に推進してきた国の責任は極めて重大であるとも述べています。そして、国が原告らの損害賠償請求権の消滅を主張するための根拠としてきた民法724条後段の解釈について、時間の壁である「除斥期間」を一律に適用してしまうと「著しく正義・公平の理念に反し、到底容認できない結果」になる場合があるとして、過去の最高裁判例を変更しました。そのうえで、国が20年の経過による損害賠償請求権の消滅を主張することは、「信義則に反し、権利の濫用として許されない」と厳しく断じたのです。これは、障害者差別や深刻な人権侵害である被害に長年向き合わず、時間の経過のみを理由として争いを長引かせてきた国への強い批判であり、この判断を高く評価します。

特筆すべきことは、優生保護法3条1項1号から3号で本人の同意を要件にしていることについて、このような差別的な不妊手術について本人に同意を求めること自体が「個人の尊厳と人格の尊重の精神に反し許されない」ことで、仮に同意があったとしても強制であることには変わりないとした点です。差別的な目的のための手術は、同意があったとしても人権侵害であることが明示されたという点で、非常に意義があります。

今回の最高裁判決は、これまでの被害者の渾身の訴えを受け止め、憲法の番人・人権の砦としての司法の役割を果たしたものといえます。とくに、被害が闇に葬られてはならないと、25年以上も声をあげ続けた飯塚淳子さん(仮名)と、何度面談をしても「当時は合法・適法だった」として一切動こうとしない国に対して最初に裁判をする決意をした佐藤由美さんと義姉の路子さん(いずれも仮名)の訴訟は、仙台地裁でも仙台高裁でも不当な判決だっただけに、最高裁が被害者のおかれてきた現実に向き合った判決を下したことに市民として安堵を覚えています。被害者の人権回復のための歩みに、ようやく司法が加わってくれた、という思いです。また、最高裁の審理における情報保障や環境整備についても一定の前進があったことを評価します。今後も、司法へのアクセスにはまだ障壁が多く存在することを自覚し、すべての人に平等に開かれた裁判所になるよう環境整備を速やかに進めることを期待します。

これまで私たちは、「優生保護法問題は終わっていない」と訴えてきました。判決を受け、国はようやく態度を変え、被害者に対する補償への歩みを始めたように見えます。まずは、優生保護法の被害は当然のことながら、長年放置したうえで、裁判でも長く苦しめてきたことについて、真摯な謝罪をすべきです。そして、国や国会が差別の歴史と深刻な被害の実態に向き合い、深い反省のうえに、裁判の原告に限らないすべての被害者に対して、その被害に見合う補償と尊厳回復の措置をとることを求めます。さらには、被害の実態調査と検証を行い、広く公表するとともに、人権教育の強化等、社会に染み付いてしまった優生思想を取り除くための政策をより一層進めるよう強く要請します。ことに、障害のあるなしにかかわらず、子どもを産むか産まないかを自分で決める権利、すなわち「性と生殖の健康/権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」が尊重されるということが社会的に認知されるよう法に明記し、二度と同じようなことが繰り返されないようにすることが求められます。

7月3日の最高裁判決は、勇気を振り絞って声をあげた被害者が切り開いてきた道のうえにあります。優生保護法の被害の拡大には、地方自治体、医療・福祉業界、マスメディア、そして市民社会にも責任があることを忘れてはなりません。障害や病気のある人に「仕方がない」という思いをさせてきた社会が、被害を見過ごし、被害者を黙らせてきたのです。そのなかで声をあげた少数の被害者の訴えが、時間をかけて社会を変えてきました。この勇気と闘いに心から敬意を表します。そして、私たちも歴史に向き合い、当事者の声に耳を傾け、自分ごととして考え、同じ社会で共に生きることをとおして、命の価値の序列化に抗う「いのちを分けない社会」をめざします。

 

 

以上

2023年10月25日優生保護法訴訟仙台高裁判決に対する声明
2023年10月30日
優生手術夜害者とともに歩むみやぎの会
強制不妊訴訟不当判決にともに立ち向かうプロジェクト

 私たちは、2018年に仙台地裁で始まった、優生保護法被害者の国への謝罪と補償を求める闘いに伴走する学生・市民の有志です。同法が長年にわたって許してきた凄まじい人権侵害の歴史を学び、見過ごされてきた当事者の「人生.害」に向き合い、国の責任を問うとともに、二度と同じことを繰り返さないよう、地域社会での「共生」の実現を目指して活動をしています。

 2023年10月25日、仙台高等裁判所第 2 民事部(小林久起裁判長)は、国の控訴を棄却し、優生保護法被害者である被控訴人らへの損害賠償を命じる原審判決を維持する判決を言い渡しました。これは、2018年1月に宮城県の女性が提訴した国家賠償請求訴訟につづく全国の一連の裁判で、8 つ目の勝訴判決でした。また一番と二番の両方で被害者が勝訴をした全国初の判決でもあります。

判決では、優生保護法が憲法13条、14条1項、24条2項に、立法当時から明白に違反することを認めました。また国会議員は、明白に人権を侵害する法律を立法し、適用したことから、少なくとも過失によって違法に原告らに損害を与えたとしました。

 さらに、国が原告らの損害賠償請求権の消滅を主張するための根拠としてきた民法724条後

段について、除斥期間ではなく時効と解釈することによって、20年を過ぎていても損害賠償請求権は消滅していないと判断しました。そして、「憲法に違反する法律を制定し、法の運用という適法であるかのような外形の下に、障害者に対する強制優生手術を実施・推進して、法の下の平等に反する差別を行い、子を産み育てる自由を奪い、同意のない不妊手術をして身体への重大な侵襲を強制するという重大な人権侵害の政策を推進してきた」国が、20年の経過による損害賠償請求権の消滅を主張することは、「権利の濫用」にあたると厳しく断じました。まさに、障害者差別や深刻な人権侵害である被害に向き合わず、時間の経過のみを理由として争いを長引かせている国への強い批判であり、この判断を高く評価します。

 特筆すべきことは、原告らの損害を、優生手術だけでなく、不当な差別の下に生きてこなければならなかったことや、国による謝罪や補償がなされなかったことによる精神的苦痛もふくめた全体として評価したうえで、提訴時を基準として評価算定すべきとしている点です。これは、優生保護法の夜害を単に「子どもをうめなくされた」ことだけで考えるのではなく、差別的な思想により「不良」とレッテルを貼られ、心身ともに深い傷となる手術をされ、秘密を抱えながら長年苦しんできた被害者の「人生被害」としてとらえることを裁判所が明確に認めたということです。.害者の渾身の訴えを受け止め、実態を的確に踏まえた評価であり、人権の岩としての司法の役割が果たされたといえます。

 本判決を受けて、国は、優生保護法にもとづく人権侵害の実態と、障害のある人に対する偏見・差別が払拭されていない現状に真摯に向き合うべきです。違憲の法による人権侵害に対する損害賠償から逃れ続けることは、何重もの人権侵害をいまだに続けていることにほかなりません。いまこそ、上告することなく、本判決を速やかに確定させ、原告らの人権回復を開始するよう求めます。

 加えて、政府は、被害を訴える原告らに会って話を聞き、一刻も早く直接謝罪をすべきです。また、現行の「旧日優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」の運用にとどまらない、すべての被害者に対して、その被害に見合う補償と尊厳回復の措置を求めます。さらには、彼害の実態調査と検証を行い、広く公表するとともに、人権教育の強化等、社会に染み付いてしまった優生思想を取り除くための政策をより一層進めるよう強く要請します。





2023年6月1日優生保護法訴訟仙台高裁判決に対する声明
                                                                                        2023年6月6日
                    優生手術被害者とともに歩むみやぎの会
             強制不妊訴訟不当判決にともに立ち向かうプロジェクト

私たちは、2018年に仙台地裁で始まった、優生保護法被害者の国への謝罪と補償を求める闘いに伴走する学生・市民の有志です。同法が長年にわたって許してきた凄まじい人権侵害の歴史を学び、見過ごされてきた当事者の「人生被害」に向き合い、国の責任を問うとともに、二度と同じことを繰り返さないよう、地域社会での「共生」の実現を目指して活動をしています。
2023年6月1日、仙台高等裁判所第1民事部(石栗正子裁判長)は、優生保護法被害者である控訴人らの請求を棄却する判決を言い渡しました。国による深刻な人権侵害を前にしながら、その被害回復の責任を見逃す冷酷な判断に、最大限の表現をもって強く抗議します。
判決では、優生保護法が憲法14条1項に違反することを認めました。しかしながら、被害者が強制不妊手術の被害を受けてから20年以内に裁判を起こすことは、「客観的におよそ不可能でありまたはその行使の機会がなかったとまではいえない」とし、除斥期間の適用を認めました。
 一審判決以降、4年近くにわたり、控訴人らはさまざまな証拠や証言をもとに、除斥期間の適用が制限されるべきだと訴えてきました。にもかかわらず、被害者が裁判を起こせなかった事情は主観であり、客観的事実ではないと断じたのです。これは、時代背景や社会状況を無視した不合理な認定であり看過できません。控訴人らはいずれも15~16歳で、本人への説明もなく手術されており、当時は優生保護法による被害であることも知りませんでした。偶然家族の話によって不妊手術であったことを知ったからといって、その責任が国にあることを認識できるでしょうか。ましてや、不妊手術という極めてセンシティブな個人情報を30歳代半ばまでに弁護士等に告知し、同法の存在する差別的な時代に裁判を起こすなど不可能としか言いようがありません。
同法がなくなったあとも、本件の控訴人のひとりである飯塚淳子さん(仮名)は、証拠となる書類を手に入れることができませんでした。宮城県が本来保存すべき記録を焼却処分していたためです。法律家に相談をしても、「証拠がないので裁判をしても勝ち目がない」と言われていました。厚生省にも、「当時は合法・適法、謝罪も補償も調査もしない」と国の正当性を主張されました。このような状況のなかで、「制度さえあれば訴えられる」という論理はあまりにも非現実的であり、理不尽です。人権の砦であるはずの裁判所が、被害を訴えることの困難さに思いが至らないことに呆れ、激しい憤りを覚えます。
昨年の大阪高裁から続く7つの勝訴判決は、正義・公平の理念に基づき、被害者が裁判に訴え出ることが不可能であったことの原因や背景を丁寧に認定し、被害者の実態に即した判断をしてきました。今回の仙台高裁判決は、これらの判例の積み重ねを無視し、現実を見ない判決であり、到底受け入れることはできません。
そもそも、障害のある人や社会的弱者が意思表明する機会を奪われたり、やっとの思いで伝えた言葉をまともにとりあってもらえなかったりする状況は過去のものではありません。障害者差別解消法があっても、人生の重要な事柄を自己決定する機会が十分に保障されているとは言えない現状があります。また、本人には直接説明されず、隣にいる介助者や通訳者に向かって話しかけられる場面は多くの障害者が経験しています。何もできない存在として、まるでいないかのように扱われることは今日でも珍しくないのです。
6月1日の判決言い渡し期日において、裁判長は、眼前にいる控訴人に対して、控訴棄却の理由さえ説明しませんでした。まさに上記で示したことに通ずる、控訴人や障害者を含む多くの傍聴人を軽んじた態度であり、深い怒りと失望を感じています。こうした態度そのものが司法への信頼を損なうものであり、容易に訴えることができない現実を象徴しているかのようでした。
加えて、公表された判決文は、除斥期間の適用理由が示される部分において広範囲に黒くマスキングされており、読むことができなくなっています。弁護団によれば、その箇所で、控訴人の義姉を「義妹」と書き違えていることがわかりました。判決理由の根幹にかかわる部分を覆い隠したことは言語道断です。さらに、人物関係を誤って記載したまま気づかないことにも判決のずさんさが表れており、怒りを禁じ得ません。人を裁く立場にある裁判所や司法に携わる者は、自らの権力性・差別性を真摯に顧みて、目の前の当事者に誠実に向き合うべきです。
最後に強調すべきことは、このような許しがたい判決においても、優生保護法は憲法違反であり、被害は重大な人権侵害であったと認めている点です。国が被害回復から逃れ続けることは、何重もの人権侵害をいまだに続けていることにほかなりません。政府は、被害を訴える原告・控訴人らに会って話を聞き、一刻も早く直接謝罪をすべきです。また、現行の「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」の運用にとどまらない、すべての被害者に対して、その被害に見合う補償と尊厳回復の措置を求めます。さらには、被害の実態調査と検証を行い、広く公表するとともに、人権教育の強化等、社会に染み付いてしまった優生思想を取り除くための政策をより一層進めるよう強く要請します。    以上

 

2023年3月6日優生保護法訴訟仙台地裁判決に対する声明
                                                                 
                                   2023年3月9日

                    優生手術被害者とともに歩むみやぎの会
             強制不妊訴訟不当判決にともに立ち向かうプロジェクト

 

 

私たちは、仙台地裁で始まった、優生保護法被害者の国への謝罪と補償を求める闘いに伴走する学生・市民の有志です。同法が長年にわたって許してきた凄まじい人権侵害の歴史を学び、見過ごされてきた当事者の「人生被害」に向き合い、国の責任を問うとともに、二度と同じことを繰り返さないよう、地域社会での「共生」の実現を目指して活動をしています。
2023年3月6日、仙台地方裁判所第3民事部(髙橋彩裁判長)は、国に対し、優生保護法被害者である原告らに対する損害賠償を命じる判決を言い渡しました。これは、2018年1月に宮城県の知的障害のある女性が提訴した国家賠償請求訴訟につづく全国の一連の裁判で、5つ目の勝訴判決でした。
判決では、優生保護法が憲法13条、14条1項、24条2項に違反することを認めました。また、被害者が、手術の内容やその実施主体および根拠について認識することが困難な仕組みをつくりだしたのは、国であったと認定しています。さらに、国が同法にもとづく優生思想の普及を目的とした政策を継続し偏見・差別を強化したこと、法改正後も優生手術が適法であるという立場を取り続けたこと等によって、原告らが提訴をするための情報や相談機関にアクセスすることが困難な状況であったとしました。そしてその困難さは、原告らが2018年1月以降に優生保護法国賠訴訟の報道を知り、関係者の支援を経て、法律相談を実現したときまで解消しなかったと述べています。このような特段の事情を踏まえて、除斥期間の適用は著しく正義・公平の理念に反するとして、除斥期間の適用制限をしました。
特筆すべきなのは、優生手術について損害賠償請求することは、障害や不妊手術というプライバシーにかかわることを弁護士に告知し、法廷で公表することを伴い、報道対象にもなるうえ、自身や親族・関係者に影響が及ぶことも想定されることから容易ではないとして、被害者が被害を訴えることの困難さにも言及している点です。提訴に至るまでにはいくつもの障壁があり、関係者や法律家による支援によって初めて実現するものであったという原告の事情を的確に踏まえた判決であり、高く評価します。
2018年5月の仙台地裁判決では、優生保護法を憲法違反としつつ、除斥期間を適用し原告の訴えを退けました。やっとの思いで裁判に訴えたにもかかわらず、ことの重大さに反して、「時間切れ」という冷たい対応に被害者は傷つけられ、私たちは強い憤りを覚えていました。今回の判決では、被害者が自らの被害を言葉にし、裁判を起こすことがいかに困難であるか、またそれを克服するために十分な支援が必要であることを裁判所が明確に認めており、やっと司法が人権保障の砦としての役割を果たしてくれたという思いでいます。
国は、優生保護法に基づく人権侵害の実態と、障害のある人に対する偏見・差別が払拭されていない現状に真摯に向き合うべきです。違憲の法による人権侵害に対する損害賠償から逃れ続けることは、何重もの人権侵害をいまだに続けていることにほかなりません。いまこそ、控訴することなく、本判決を速やかに確定させ、原告らの人権回復をするよう求めます。
さらに、現行の「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」の運用にとどまらず、すべての被害者に対して、その被害に見合う補償と尊厳回復の措置をとったうえで、偏見・差別をなくすための人権教育の強化等、社会に染み付いてしまった優生思想を取り除くための政策を推進することを強く要請します。

以上

優生保護法訴訟 大阪高裁判決を不服として国が上告したことに対する声明 

                         2022年3月10日
              優生手術被害者とともに歩むみやぎの会 
         強制不妊訴訟不当判決にともに立ち向かうプロジェクト 

 私たちは、仙台地裁で始まった、旧優生保護法被害者の国への謝罪と補償を求める闘いに伴走する学生・市民の有志です。同法が長年にわたって許してきた凄まじい人権侵害の歴史を学び、見過ごされてきた当事者の「人生被害」に向き合い、国の責任を問うとともに、二度と同じことを繰り返さないよう、地域社会での「共生」の実現を目指して活動をしています。
 2022年3月7日、旧優生保護法のもと不妊手術を強制された人たちへの賠償を初めて国に命じた大阪高等裁判所の判決を不服として、国は最高裁判所に上告しました。障害や病気、貧困状態にあった人々らに対し「不良な子孫の出生を防止する」ためとして、強制的に不妊手術・人工妊娠中絶手術を受けさせ、優生思想や差別を強化してきた事実について、真摯に反省することなく上告したことに強く抗議します。 
 岸田文雄首相は2月28日の参議院予算委員会で、本件について、「政府として真摯に反省し心から深くおわび申し上げる」「二度と繰り返さないよう最大限の努力を尽くす」と述べました。上告したことで、この「お詫び」が欺瞞に満ちた、形だけのものであったことが明らかになりました。被害者を騙し、嘘を撒いたことにほかなりません。 
 また、国が上告したことを受けて、後藤茂之厚生労働大臣は「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」に基づく一時金を円滑に支給することで責任を果たしていきたいという考えを示しました。こうした姿勢にも強く抗議します。 2019年4月にできたいわゆる「一時金支給法」は、優生保護法が憲法違反であったことをふまえておらず、補償のための法律ではありません。お詫びの主体も「我々」であり、国の責任を明示して謝罪するものではなく、金額も320万円と、被害の実態に見合わない額になっています。被害者への個別通知も行われていないため、施行からまもなく3年となりますが、対象者は約2万5000人いると考えられているにもかかわらず、認められたのは1000人以下です。さらに、全国の原告の中には中絶手術を強制されたことで国を訴えている被害者もいますが、この法律では中絶手術を受けさせられた人を一時金の受け取り手として認めていません。私たちはこの法律によって国の責任が果たされることはないと考えます。国が責任を果たすために、謝罪の主体の明確化・十分な支給額・個別通知を含む被害者への向き合い方等、抜本的な改正あるいは新法の制定を求めます。
 優生手術被害者の多くは高齢であり、謝罪と補償をこれ以上先延ばしにすることがあってはなりません。最大の人権侵害を放置してきた国に対し、一刻も早く上告を取り下げ、2月22日の大阪高裁判決に従って、謝罪と補償をすることを求めます。
以上

優生手術被害者とともに歩むみやぎの会 「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」に対する声明

2019年4月24日

優生手術被害者とともに歩むみやぎの会

 わたしたち「優生手術被害者とともに歩むみやぎの会」は、旧優生保護法の被害者の謝罪と補償を求める闘いに伴走するとともに、優生手術被害の歴史を学び、当事者の声に耳を澄ませる場をつくる市民団体です。昨年3月28日より、特に宮城県を中心に、障害のある人もない人もともに活動しています。

 わたしたちは、旧優生保護法によって障害のある人の人権が侵害されてきたこと、また母体保護法に改正されてからも、その被害が長年に渡って放置されてきたことを深刻に受け止めています。立法によって、優生思想を否定し、被害者の人権回復がなされることを求めてきました。

 本日、参議院本会議において「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律案」が審理され、全会一致で可決・成立したことを受け、宮城県の被害者の声をそばで聞き、これまでの裁判を見守ってきた者として、下記のとおり意見を申し述べます。

 この法律は、被害者の人権回復のための第一歩であり、国会議員が過去に向き合い、反省とお詫びの意を表明したことについて評価しています。これまで一切の謝罪や補償がなかった現実を考えれば、一時金の支給や調査を、国の責任で行うと明記されたことは大きな前進であるとも考えています。

 一方で、この法律は、深刻な人権侵害である優生手術と、その被害が長く放置されてきたこと対して、十分な補償になっているとはいえません。被害がこのように小さく見積もられたことについて遺憾に思います。また、同じ法律で被害を受けた人工妊娠中絶の被害者が対象となっていないことも問題です。

さらに、旧優生保護法は、直接の手術の被害者だけでなく、その思想によって多くの障害者を傷つけてきましたが、そのことについて一切の言及がありません。

 したがって、優生思想の否定および、被害者の人権と尊厳の真の回復のために、制度の拡充を強く求めます。

1.被害者を一人も取り残さないで補償してください。

2.人権侵害の被害にみあう補償をしてください。

3.優生思想の否定と、「性と生殖の健康/権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」が尊重されることを明記してください。

以下で詳細を述べます。

1.被害者を一人も取り残さないで補償してください。

1)優生上の理由で行われた人工妊娠中絶の被害者も含めてください。

 法律では、旧優生保護法の施行期間中の優生手術(不妊手術)や子宮摘出、放射線照射等の被害者のみ対象にしています。

 一方、優生上の理由によって人工妊娠中絶をさせられた被害者が対象となっていません。旧優生保護法の第14条では、優生上の理由で人工妊娠中絶をすることが可能となっていました。法律上は、本人の同意が必要となっていますが、本人に知らされず行われていたケースもあります。あるいは他の選択肢を奪われて、やむを得ず同意させられているケースもあります。不妊手術と同じ思想で行われた人工妊娠中絶の被害は、同様に補償されるべきです。

2)自分が被害者であることを知らない被害者も、きちんと補償がされるよう工夫をしてください。

 国は被害者の人権が回復されるように手を尽くすべきです。どうすればまだ名乗っていない被害者にも、プライバシーを守りつつ謝罪と補償をすることができるのか、被害者や障害当事者、支援者等を交えて検討をしてください。

3)優生保護法廃止以降も、同様の思想によって断種や中絶が行われているケースは、補償の対象としてください。

 優生保護法が失効したのちであっても、その考え方の下で行われた断種手術や子宮摘出手術を含む生殖器関連の手術を施された者は補償の対象にしてください。
 

2.人権侵害の被害にみあう補償をしてください。

 旧優生保護法の被害について、これまで国は一度も調査をしていません。国賠訴訟を受けて、初めて各地に残る資料の調査を厚労省が行いましたが、その被害実態はほとんど明らかになっていません。きちんと調査を行い、その被害実態にみあった補償を行ってください。
 なお、現在裁判の原告になっている少数の被害者の証言だけでも、320万円の一時金が妥当なものだとは思えません。被害がこのように小さく見積もられていることは極めて遺憾です。
 被害者の受けた被害は、重大な人権侵害です。単に手術を強制しただけでなく、その人生を幾重にも苦しめてきました。

​​

・優生手術そのものと、それが心身に大きな傷を与えたこと
  また、手術のあとも、痛みや、身体や精神へのさまざまな影響を与え続けたこと
・本人には知らせず、手術を強制したこと
・個人が、「子どもを産むか産まないか」を自分で選んで決断する機会を奪ったこと
・法の運用がずさんであったことを知りながら、それを容認していたこと
・母体保護法に改正されてからも被害の補償をせず、放置し続けたこと

 

 これらの人権侵害に対して、320万円の一時金で納得できるものではありません。被害者の人権回復のために、きちんと被害について調査をし、その実態にみあった補償を行ってください。
 

3.優生思想の否定と、「性と生殖の健康/権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」が尊重されることを明記してください。

 法律のなかで、優生保護法の問題点をきちんと明らかにし、その誤りを認めてください。
とくに、障害者を「不良」であるとして社会から排除しようとしてきたことを認め、それが間違った考え方であることをはっきりと表明してください。
 また、障害のあるなしにかかわらず、「性と生殖の健康/権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」が尊重されることを明記してください。

 

1)優生保護法の大きな問題は、障害者を「不良」な存在であるとしたことです。優生保護法で広く推進されてきた優生思想は、今も社会に根強く存在し、障害者差別が温存されている一因となっています。このことを鑑みて、法律の前文で、優生思想をはっきりと否定してください。

2)もうひとつの大きな問題点は、国家が個人のプライベートな領域に踏み込み、「産んでよい人」と「産むべきではない人」を分け、本人の自己決定の機会を奪ってきたことです。法律で定められた範囲を超えて多くの障害者が中絶や不妊手術をさせられています。また、実際の被害はなくても、不妊手術や中絶手術を推奨されるような言葉をかけられた経験のある障害者はたくさんいます。優生保護法は手術の被害者だけでなく、多くの障害者を傷つけてきました。

 法律では、障害のあるなしにかかわらず、子どもを産むか産まないかを自分で決める権利、すなわち「性と生殖の健康/権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」が尊重されるということを明記してください。なお、この権利は、日本も批准している障害者権利条約でも保障されているものですが、社会的な認知を高めるためにも、法律に記載されることが求められます。

 

 

以上

声明文PDF(データが開きます)​

優生保護法による被害からの人権回復のための法律案に関する要望書

 わたしたち「優生手術被害者とともに歩むみやぎの会」は、「与党旧優生保護法に関するワーキングチーム」および「優生保護法下における強制不妊手術を考える議員連盟 法案作成プロジェクトチーム」に対して、2018年12月4日付で「優生保護法による被害からの人権回復のための法律案に関する要望書」を提出いたしました。以下に、与党旧優生保護法に関するワーキングチームに提出した要望書の文面を掲載いたします(議員連盟のプロジェクトチームにも同一内容で要望書を提出しました)。

 要望書は以下からダウンロードできます。

 与党旧優生保護法に関するワーキングチーム」宛

 「優生保護法下における強制不妊手術を考える議員連盟 法案作成プロジェクトチーム」宛

 

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2018年12月4日

 

与党旧優生保護法に関するワーキングチーム 御中

 

優生手術被害者とともに歩むみやぎの会
共同代表 杉山 裕信 ・ 黒坂 愛衣

優生保護法による被害からの人権回復のための法律案に関する要望書

 

 わたしたち「優生手術被害者とともに歩むみやぎの会」は、旧優生保護法の被害者の謝罪と補償を求める闘いに伴走するとともに、優生手術被害の歴史を学び、当事者の声に耳を澄ませる場をつくる市民団体です。本年3月28日より、特に宮城県を中心に、障害のある人もない人もともに活動しています。
 このたび、旧優生保護法下で優生手術等を受けさせられた被害者への補償のための法案の骨子がまとまるにあたり、宮城県の被害者の声をそばで聞き、これまでの裁判を見守ってきた団体として、下記のとおり要望いたします。
 深刻な人権侵害である優生手術と、その被害が長く放置されてきたことによる幾重にもわたる被害に真摯に向き合い、被害者の人権と尊厳が真に回復されるための制度を強く願います。

 

1.    法の名称と目的
1)法の名称には、①優生手術被害者の人権回復 ②補償 という言葉をいれてください。
2)法の目的は、①優生手術被害者への謝罪 ②補償 ③検証 ④優生思想の否定と再発防止としてください。

2.    謝罪のあり方
 優生手術の被害者に、国として謝罪をしてください。
 骨子の「趣旨・性格」では、優生手術等を受けた方の多大な身体的・精神的苦痛に対する「お詫び」の表明となっていますが、それでは謝罪として不十分です。
1)謝罪の主体は「国」であるべきです。
2)謝罪するべきことは:
 ・優生手術そのものと、それが心身に大きな傷を与えたこと
  また、手術のあとも、痛みや、身体や精神へのさまざまな影響を与え続けたこと
 ・個人が、「子どもを産むか産まないか」を自分で選んで決断する機会を奪ったこと
 ・法の運用がずさんであったことを知りながら、それを容認していたこと
 ・母体保護法に変わってからも被害の補償をせず、放置し続けたこと
 などがあります。
 手術だけでなく、被害者のその後の人生の可能性を奪い、多大な影響を与え続けたこと、またそれを放置しつづけたことについて、国としてきちんと謝罪してください。
  
3.    優生思想の否定と「性と生殖の健康/権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」の明記
 法律のなかで、優生保護法の問題点をきちんと明らかにし、その誤りを認めてください。
とくに、障害者を「不良」であるとして社会から排除しようとしてきたことを認め、それが間違った考え方であることをはっきりと表明してください。
 また、障害のあるなしにかかわらず、「性と生殖の健康/権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」が尊重されることを明記してださい。
1)優生保護法の大きな問題は、障害者を「不良」な存在であるとしたことです。優生保護法で広く推進されてきた優生思想は、今も社会に根強く存在し、障害者差別が温存されている一因となっています。このことを鑑みて、法律の前文で、優生思想をはっきりと否定してください。
2)もうひとつの大きな問題点は、国家が個人のプライベートな領域に踏み込み、「産んでよい人」と「産むべきではない人」を分け、本人の自己決定の機会を奪ってきたことです。法律で定められた範囲を超えて多くの障害者が中絶や不妊手術をさせられています。また、実際の被害はなくても、不妊手術や中絶手術を推奨されるような言葉をかけられた経験のある障害者はたくさんいます。優生保護法は手術の被害者だけでなく、多くの障害者を傷つけてきました。
 法律では、障害のあるなしにかかわらず、子どもを産むか産まないかを自分で決める権利、すなわち「性と生殖の健康/権利(リプロダクティブ・ヘルス/ライツ)」が尊重されるということを明記してください。なお、この権利は、日本も批准している障害者権利条約でも保障されているものですが、社会的な認知を高めるためにも、法律に記載されることが求められます。
 
4.    謝罪と補償の方法
 被害者にするべきことは、「通知」ではなく「謝罪」です。
 名乗りをあげていない被害者の人権回復にも尽力してください。
1)つくられるべき補償制度は、支援のための給付金支給制度ではありません。国が行なってきた人権侵害について、とうてい償えるものではないけれども、その謝罪の意の表明としてお金というかたちでの補償がされるべきです。ですから、申請主義は馴染みません。記録で確認できる一人ひとりの被害者に対して、どのように謝罪の表明ができるかを検討してください。
2)被害者本人が知らないうちに手術をされていたからといって、その事実をなかったことにはできません。多くの被害者が告げられないまま、あるいは騙されて手術を受けさせられました。そのこと自体が重大な人権侵害です。
 さらに、本来謝罪をうけるべき立場なのに、知らないかもしれないから伝えなくてもよいというのは、二重に貶めていることになります。本人の身体や人生に関わる大切なことを勝手に判断し、決めつけるようなことを繰り返してなりません。
 国は被害者の人権が回復されるように手を尽くすべきです。どうすればまだ名乗っていない被害者にも、プライバシーを守りつつ謝罪と補償をすることができるのか、被害者や障害当事者、支援者等を交えて検討をしてください。

 

5.    補償の対象者
補償の対象者は、優生保護法の有効期間の被害者に限定せず、次のようにしてください。
1)優生保護法が効力を有した期間に優生的理由によって不妊手術や人工妊娠中絶手術を施された者
〔優生的理由によらない、本人の同意にもとづく人工妊娠中絶は、刑法堕胎罪の阻却事由として、女性にとって必要な選択であり、性と生殖に関する健康/権利の一つであることを確認し、中絶そのものを罪悪視し禁止することがないよう配慮をお願いします〕
2)国民優生法(1941年から優生保護法につながる1948年まで)に基づく手術を施された者
3)優生保護法の有効期間、または失効したのちであっても、優生保護法の濫用もしくはその考え方の下で行なわれた断種手術や子宮摘出手術を含む生殖器関連の手術を施された者
4)上記の手術を施された者の配偶者

6.    補償の手続き
 被害者の年齢や障害を考慮し、確実に補償を受けられる仕組みにしてください。
1)被害者がきちんと補償を受けられるように、相談や申請の窓口はアクセスしやすいように整備してください。また情報にアクセスしやすいようにさまざまな方法を用いてください。
 ・窓口は、各地の交通アクセスのよい場所に設置し、物理的なバリアを取り除いてください。
  情報や申請に必要な書類も、身近な場所(市区町村等)で容易に手に入るようにしてください。
 ・相談は、電話・FAX・Eメール・郵便等、さまざまな方法でできるように整備してください。
 また相談時のコミュニケーションは、手話・筆談、あるいは支援者・通訳者の同行等、本人にとってやりとりしやすい方法を採用し、合理的配慮を行なってください。
2)申請は本人だけでなく、代理人でもできるようにしてください。
 被害者の多くが高齢で、また障害のため、自分自身で申請手続きをすることが困難な状況であることが想定されます。本人の権利が侵害されないように留意しつつ、周囲の人の支援を受けて申請できるような仕組みにする必要があります。

7.    補償の申請の期間
 補償の申請の期間を5年と限定しないください。
 優生保護法が1996年に母体保護法へ改正されてから、22年近くが経っています。補償のための制度が20年以上つくられず、被害者を放置しつづけてきたにもかかわらず、申請期間が5年というのは短すぎます。
多くの被害者が、障害のため、あるいは社会的な環境のために、簡単には名乗りを上げることができない状況にあります。障害者に対する差別意識が解消されることによって、申請がしやすくなる可能性もあります。深刻な人権侵害であるため、自分の被害を受け止め、補償を受けたいと思うまでに時間がかかる人もいると予想されます。
 より長い期間(少なくとも20年以上)は申請ができるようにするべきです。また、実際の申請の状況によっては、法の制定時に決めた期間も必要に応じて見直すことのできるような仕組みにしてください。


8.    被害の認定機関
 被害の認定機関は厚生労働省から独立した機関にしてください。
 政府は、これまで長く被害者が謝罪と補償を求めてきたにもかかわらず、「当時は合法だった」として、必要な制度の整備を行なってきませんでした。現在行なわれている裁判においても、「国の立法不作為にはあたらない」という姿勢をとり続けています。これまで被害者に対して誠実な対応をしてこなかった政府の行政機関である厚生労働省に、公正な被害の認定ができるとは思えません。被害の認定は、政府から独立した第三者機関で行なってください。
 また、この機関には、単に被害の認定だけでなく、積極的に被害者を見つけだすための情報提供の役割をもたせてください。

 

9.    検証機関の設置
 法律に、旧優生保護法の制定過程と運用実態を検証するための第三者機関を明記してください。
 同じようなことが二度と起らないように、過去の過ちに真摯に向き合う必要があります。被害者や関係者の証言、さまざまな記録によって、旧優生保護法の運用が相当ずさんであったことが明らかになっています。これまでの政府の説明であった「合法であり」「厳正な審査に基づいた」運用ではありませんでした。母体保護法に変わってからすでに長い時間がたっており、記録の多くが失われていますが、今回の調査によって見つかったものもあります。今後、関係者の証言も出てくる可能性があります。これらをきちんと検証し、それを記録し、公開する必要があります。
 検証のポイントには:
 ①    なぜこのような法律がつくられたのか
 ②    なぜこの法律が50年近くも続いてきたのか
 ③    いつ、どこで、どのような被害が起きていたかの全国的な実態の把握
 ④    優生保護審査会の審査実態
 ⑤    国や地方自治体の行政やマスメディア、医療、福祉、教育、市民社会の果たした役割
 ⑥    旧優生保護法が母体保護法へ改正されて以降の実態調査
などがあります。
 なお、この検証は、被害者への謝罪と補償のための重要な情報となります。検証の内容は公開されるとともに、認定機関と連携することが求められます。
 検証のための第三者機関の設置と役割をしっかりと法に書き込んでください。


以上
 

2022年2月22日優生保護法訴訟大阪高裁判決に対する声明

                                                                                        2022年3月7日
                    優生手術被害者とともに歩むみやぎの会
             強制不妊訴訟不当判決にともに立ち向かうプロジェクト


私たちは、仙台地裁で始まった、旧優生保護法被害者の国への謝罪と補償を求める闘いに伴走する学生・市民の有志です。同法が長年にわたって許してきた凄まじい人権侵害の歴史を学び、見過ごされてきた当事者の「人生被害」に向き合い、国の責任を問うとともに、二度と同じことを繰り返さないよう、地域社会での「共生」の実現を目指して活動をしています。
2022年2月22日、大阪高等裁判所第5民事部(太田晃詳裁判長)は大阪地裁判決を変更し、国に対し優生保護法被害者である控訴人らに対する損害賠償を命じる判決を言い渡しました。これは、2018年1月に宮城県の知的障害のある女性が提訴した国家賠償請求訴訟につづく全国の一連の裁判で、初めての勝訴判決でした。
判決では、旧優生保護法によって「不良」であるとの烙印を押され、差別・偏見が続く社会で、十分な情報も相談先もなく、司法へのアクセスが著しく困難となっていた控訴人らに対して、除斥期間の適用をそのまま認めることは「著しく正義・公平の理念に反する」として、除斥期間の適用を制限しました。この点は、控訴人らがおかれてきた社会環境や生活状況を踏まえたものであり、高く評価します。
これまで、仙台地裁をはじめ各地の地裁判決では、旧優生保護法を憲法違反としつつ、いずれも除斥期間を適用し原告の訴えを退けてきました。このような、違憲の法律による重大な人権侵害が、なんの責任も問われずに見逃されるという判断に、私たちは強い憤りを覚えていました。今回の大阪高裁判決では、やっと司法が人権保障の砦としての役割を果たしてくれたという思いでいます。
一方で大阪高裁判決は、控訴人らの被害が終わった時点を、旧優生保護法が母体保護法に改正された前日の1996年9月25日としています。しかし、本判決も指摘するように、控訴人らの被害は優生手術だけにとどまらず、この法律によって一方的に「不良」とされ、非人道的かつ差別的な烙印を押された状態に置かれたことにあります。法律改正のその日から、その被害が終わるなどということはありません。焼きごてを押し当てるのをやめたからといって、次の日には傷跡がきれいになくなるわけではないのです。社会のあらゆるところに染み付いてしまった優生思想を、取り除く措置がなされなければなりません。個人の尊厳の回復には、少なくとも、謝罪と補償、名誉回復、偏見差別をなくすための人権教育の強化などが必要ですが、国はこれらを怠り、控訴人らの被害を長年放置してきました。その意味で、今回の大阪高裁判決が、救済措置の不作為を違法としなかったことは大変残念でした。
宮城県には、20年以上被害を訴えてきた方がおられますが、国は「当時は合法だった」と言い続け、問題をなかったことにしようとしました。国だけでなく、社会の多くの人がその被害に目を向けようとしませんでした。裁判が始まって注目されるようになると、原告に対して心無い言葉を投げかけようとする人や、インターネット上で、関連のニュースに差別的なコメントを寄せる人をみかけます。このような状況を見れば、被害を訴えることがいかに困難であるかは明白です。やっとの思いで被害を言葉にし、裁判に訴えても、ことの重大さに反して、「時間切れ」という冷たい対応に傷つけられてきました。国が、深刻な人権侵害であったことに気づきながら放置し続け、いまも被害者に誠実な謝罪や補償をしないことは、何重もの人権侵害をいまだに続けていることにほかなりません。
ここに、旧優生保護法の被害はまだ終わっていないことを改めて強調し、国がこの大阪高裁判決を真摯に受けとめ、上告することなく、すべての被害者に対して速やかに謝罪と補償、人権回復の措置をとるよう求めます。
以上

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