優生保護法訴訟 大阪高裁判決を不服として国が上告したことに対する声明
2022年3月10日
優生手術被害者とともに歩むみやぎの会
強制不妊訴訟不当判決にともに立ち向かうプロジェクト
私たちは、仙台地裁で始まった、旧優生保護法被害者の国への謝罪と補償を求める闘いに伴走する学生・市民の有志です。同法が長年にわたって許してきた凄まじい人権侵害の歴史を学び、見過ごされてきた当事者の「人生被害」に向き合い、国の責任を問うとともに、二度と同じことを繰り返さないよう、地域社会での「共生」の実現を目指して活動をしています。
2022年3月7日、旧優生保護法のもと不妊手術を強制された人たちへの賠償を初めて国に命じた大阪高等裁判所の判決を不服として、国は最高裁判所に上告しました。障害や病気、貧困状態にあった人々らに対し「不良な子孫の出生を防止する」ためとして、強制的に不妊手術・人工妊娠中絶手術を受けさせ、優生思想や差別を強化してきた事実について、真摯に反省することなく上告したことに強く抗議します。
岸田文雄首相は2月28日の参議院予算委員会で、本件について、「政府として真摯に反省し心から深くおわび申し上げる」「二度と繰り返さないよう最大限の努力を尽くす」と述べました。上告したことで、この「お詫び」が欺瞞に満ちた、形だけのものであったことが明らかになりました。被害者を騙し、嘘を撒いたことにほかなりません。
また、国が上告したことを受けて、後藤茂之厚生労働大臣は「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」に基づく一時金を円滑に支給することで責任を果たしていきたいという考えを示しました。こうした姿勢にも強く抗議します。 2019年4月にできたいわゆる「一時金支給法」は、優生保護法が憲法違反であったことをふまえておらず、補償のための法律ではありません。お詫びの主体も「我々」であり、国の責任を明示して謝罪するものではなく、金額も320万円と、被害の実態に見合わない額になっています。被害者への個別通知も行われていないため、施行からまもなく3年となりますが、対象者は約2万5000人いると考えられているにもかかわらず、認められたのは1000人以下です。さらに、全国の原告の中には中絶手術を強制されたことで国を訴えている被害者もいますが、この法律では中絶手術を受けさせられた人を一時金の受け取り手として認めていません。私たちはこの法律によって国の責任が果たされることはないと考えます。国が責任を果たすために、謝罪の主体の明確化・十分な支給額・個別通知を含む被害者への向き合い方等、抜本的な改正あるいは新法の制定を求めます。
優生手術被害者の多くは高齢であり、謝罪と補償をこれ以上先延ばしにすることがあってはなりません。最大の人権侵害を放置してきた国に対し、一刻も早く上告を取り下げ、2月22日の大阪高裁判決に従って、謝罪と補償をすることを求めます。
以上
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